美しい世界の手仕事プロジェクト

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浅草の「アミューズミュージアム」続編です。

● ドンジャのこと ●

「BORO」展示のなかで圧倒的な存在感を持っていた「ドンジャ」です。

[ドンジャ=夜着。ボロ布が幾重にも重なりあい15キログラムのものもある。夜になると囲炉裏の片隅でドンジャを来て座り眠る時にはこれを着たまま寝た。ひとつのドンジャに親子が裸でくるまって寝る]

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[「投げれば立つよなドンジャ着て」という言葉が遺されている。「ドンジャ」とは夜着のことである。丹前のような形をしていて、長着物のようでもあるが夜は布団の役目もする。本来の夜着や丹前は、表裏ともに木綿布であり、中には綿が入り、軽くて温かいものである]

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[ところが投げれば立ってしまうようなごついドンジャには、綿が使われていない、ボロ、ボロ布が重なり合っているから、ドンジャが立つのである。ドンジャの表には裂織の布を当て、裏には麻布のすり切れ弱った小布を幾重にも重ねさしたものを使い、厚々としている]

[私の手元にあるドンジャの皮(表地)は、古い麻布や木綿布を何枚も重ねて縫い合わせてある。上着や下着、果ては麻蚊帳の古くなったもの等、使い古された布の生命を惜しむかのように継ぎ足している。そしてその中に、麻糸を取った際に出るクズ麻を入れている]

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[そんなドンジャは、これが衣服かと思われるものであるが、まさしく布団なのである。中に入っているのが、綿ではなくクズ麻なので、ドンジャを見て「中世の寝具ですか」と問う人がいる。近世以降は木綿と綿の文化になったと信じているからである]

「中世の寝具ですか」という疑問、私には笑えません。私もそう思ってしまいます。ついこの間まで暮らしの中にあったものとは、、。


● ボロのこと ●

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[お祖父さんが生前着ていた「ぼろ」をその孫が着る。孫にとってそれはとても素晴らしいことであり感謝すべきことである。「自分はひとりで生きているのではない」ということを、家族みんながその子に伝えるためでもあるのだ]

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[何世代にもわたって受け継がれている「ぼろ」には、人と人の絆を結ぶ意味もあるのだ。古くなったり汚れてしまったものは、さっさと捨てて新しいものを買えばいいという現代の消費社会では、なかなか考えつかない発想なのではないだろうか]

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(今に通じるファッション性をアピールしてインパクトがありますが、私にはちょっと微妙な印象のマネキン展示でした。マネキンじゃない方が想像力が生まれそうな気がします)


● カッカのこと ●

[(カッカ(乳母)は)どんなに小さな布切れでも大切にする人だった。「着物をほどくときは、布を米のとぎ汁につけておくといいんじゃ。糸が抜けやすくて、その糸をまた使うことができる。一寸四方の小さな端切れも祖末にしてはいけねえよ。糸は人の体を包んで寒さや暑さから守ってくれるものだからな。大事なんだ」]

[カッカは万物に生命が宿っていると信じていた。だから山菜を採るときでも「せっかく育ったのに、わりいなあ」と、本当にすまなそうにワラビやキノコに声をかけながら一つひとつ摘んでいくのである。流し場で魚に包丁を入れるときなども、その魚に「わりな、わりな」と声をかけていた]

[魚も生きている。それを獲ってきた漁師も苦労している。生きているものを食べるときには謝り、それに感謝して食べなければいけないのだと言うのである。物や食べ物を大切にすることの根本はやさしさで、それがどれだけ大事か、カッカが教えてくれた。大切なのは富でも財でもないと、カッカは身をもって教えてくれたのだ]

[それから約二十年後、暇を見つけては針仕事に精を出したカッカは、自分が寝たきりになったとき、周囲の手を煩わせまいと、自分が使うであろうおしめを用意していた。仏になったときに着る白装束も縫っていたが、それは麻の着物であった。「死ねば山さ、行く。山道は険しい。麻の装束は汗はじきが良く、自分で種をまいて、育てた麻から紡いだ麻糸は、土に還りやすいから」]

[カッカが支度した白装束もおしめも長襦袢も、結局使われることはなかった。その頃には、麻布よりも木綿布が一般的になっていたため、親族が町の店から買い求めて着せたからである。カッカは帰らぬ人となった]

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カッカさん、田中忠三郎さん、ミュージアムに、ありがとうとお礼を言いたいです。
刺子展示のこと、「織姫」のこと、ミュージアムのこと、、まだ書きたいことがあります。次回に続きます。


*([ ]内は『物には心がある』(田中忠三郎/アミューズエンタテイメント)より引用しました)

 アミューズミュージアムの記事、発見しました。(ネットで調べても業界関係者のおつきあいブログみたいなのばかりで超つまらなかったんですが、やっとまともなものに出会いました)。さすが都築響一さん!!視点がぶれてませんね〜。&オープンまでの背景や状況なども、ようやく&よくわかりました。「スペシャリティ・ミュージアム探訪記 第1回 アミューズミュージアム」(WEBちくま)。写真も、さすがにいいです(たしか木村伊兵衛賞取ってますよね、都築さんって)。アミューズの意気と粋、既存博物館についての考え等、同感共感です。ただ、手仕事見習いJには、ミュージアムでちょっと微妙に感じた部分もあり(エンタテイメントとミュージアム、来場者イメージのことなど)、、そんなことを次に書いてみたいと思います〜。
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by kizashinoj | 2009-12-24 18:02 | ミュージアム・展示会
浅草に11月オープンした「アミューズミュージアム」に行ってきました。
浅草寺に隣接した古い6階建てのビルを丸ごとリノベーション。日本の文化、美や技術を紹介するライブ感覚のミュージアムだそうです。
音楽ビジネスで有名なアミューズによる企画運営ということでメディアで時々紹介されていましたが、新鮮な切り口、期待したいですよね。

ビル自体は雑居ビルという感じ。ちょっと意外。中に入るとさすがに洒落ていて、1階には和グッズのギフトショップやカフェもありました。
なかなかカッコいい空間だったので、「写真撮っていいですか」と聞くと、「ご自由にどうぞ」とのこと。スタッフの方々も感じよかったです。

お茶は後回しにして、グラフィックデザインが施された階段を上がり2階へ。すると、、ドカ〜ンと「BORO」のロゴ!そして「ボロ」をまとったレトロなマネキン!

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な、なんだ、と思っていると、学芸員さん的な女性がやさしい感じで登場。「写真を撮ってもいいこと、布に触ってもいいこと」を伝えてくれます。
エンターテインだ〜!さっすが〜!
写真を撮ってよく、布に触っていい美術館って、私たちの「美しい世界の手仕事プロジェクト(2008)」以来かも!? (*^_^*) きっと気持ちは同じ。「ライブミュージアム」だもんね〜、と、ひとり心の中で意気投合。

企画展は「布を愛した人たちのものがたり」。「世界初公開展示 国指定重要有形民族文化財 津軽刺し子着物」と「奇跡のテキスタイルコレクション BORO」の2つの企画を一気に展示するという太っ腹。タイトル回りが広告っぽいのも、ミュージアムらしくなくておもしろいです。

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今回ご紹介するのは「奇跡のテキスタイルコレクション BORO」です。

こみあげるようなものがありました。とても美しい布たちでした。そんなに昔でもない日本のこと、知らなかった私。触ってみました。身につけた人たちのことを考えました。

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「これらのコレクションは、民俗学者・著述家の田中忠三郎氏が40年以上に渡り、民俗学の研究のかたわら収集してきたもので、寺山修司や黒澤明、都築響一らがその美しさを絶賛し、作品制作のために借用するなど、学術的価値はもちろん芸術的価値の高い稀有なコレクションとして知られています。田中忠三郎氏は、「庶民の衣服が重要有形民俗文化財に指定されたのも画期的なことだが、これら衣服はどれをとっても無駄がなく美しい。それは布を織った、そして刺し綴った人々の想いと愛情、人柄がしのばれるからです」と語っています」(ミュージアムWEBより)

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「田中忠三郎コレクションの中には、江戸時代から何代にも渡り、青森の山村、農村、漁村で使われてきた“ぼろ”と呼ばれる衣服や布類が多数あります。現代のキルト、パッチワークのようにきれいなものを作りたくて作ったのではなく、そのときにあるものを重ねていき、寒さをしのぐために少しでも暖かく丈夫にしたいと、つぎはぎを重ねて大切につかわれてきたそれらぼろ布類は、今あらためて見れば、そのままイタリアやフランスのハイファッションになりそうな完璧なデザインです」(ミュージアムWEBより)

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本を買いました。『物には心がある 消えゆく生活道具と作り手の思いに魅せられた人生』(田中忠三郎/アミューズエンタテイメント)と『みちのくの古布の世界』(田中忠三郎/河出書房新社)。

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〔人間が生活していくのに必要なもの、あるいは生活そのものを指して、我々はそれを「衣食住」と呼ぶ。どうして「食」でも「住」でもなく、「衣」が最初にくるのか。20代から30代の前半まで、遺跡の発掘に明け暮れていた私は、何度も凍死寸前の、体の芯まで凍えるような寒さを経験して、「衣」が人間にとってどれだけ大切なものであるか身をもって知った。真冬でも人間は数日程度なら食糧なしでも問題なく生きていけるが、衣服なくしては一日たりとも生きていくことは不可能だ。かってこの地に生きていた人々は決して布や衣類を粗末にしなかった。丹念に刺し綴った着物をまとい、日々を精一杯に生きた。その根底には、先祖がさんざん味わってきた寒さに対する恐怖があったからではないか。その恐怖から身を守ってくれたのが、「衣」であった。つまり、衣服は生命そのものだったのだ](『物には心がある』)

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〔祖母は布をとても大事にする人だった。私が幼い頃にいたずらに布にはさみを入れると、厳しい顔で「肉を切るのと同じことだ」と叱った。それほどに衣と布は、人間にとって大切でかけがえのないものなのである。布には生命があり、祈りが込められていた](『物には心がある』)

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〔当時の人々が布を大事にしたのは、単に物が不足していたからではない。そこに大いなる意味と価値を見いだしていたからこそ大事にしていたのだ](『物には心がある』)

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このミュージアムと展示については、いろいろ書きたいことがあるのですが、長くなってしまうので回を分けようと思います。というわけで、次回に続きます。
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by kizashinoj | 2009-12-22 22:22 | ミュージアム・展示会
12月のあるさむ〜い雨の日、自由が丘駅に、あまりこの街にそぐわない面々が集まりました。
行動的コレクターWさん、部族語り部Sさん、手仕事クイーンTさん、そして土族兼手仕事見習いのJです。
ワイワイと向かった先は、「岩立フォークテキスタイルミュージアム」
世界の染織品のコレクションで有名な岩立広子さんが開設された個人美術館です。
新聞で大きく紹介されたこともあり、周辺で話題になっていました。
しかも、第1回目のテーマが「毛織物 フェルトから始まったテキスタイル」。これは早く行かなくては!
見るのなら手仕事好き仲間で一緒に見たいね〜と日程を調整、ワクワクと出かけてきました。

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ビルの中の一室、こじんまりとしたスペースですが、温かみがあり見やすい空間になっていました。
驚いたのは、来場者の多さ。雨の平日にもかかわらず、次々と女性のグループが訪れます。
年代はやや高め。民芸世代とでもいうべきでしょうか。皆さん、手仕事がお好きなんだなあと想像できる方々でした。

展示では、パシュトウーンの族長の衣装やカシミールのペイズリーなどが圧巻。プレインカの品々も見応えがありました。
岩立さんも会場にいらっしゃって、いろいろとお話を聞くことができました。
週に3日の開館とはいえ、不特定多数の来場者に話をするというのはエネルギーのいることです。
おかげさまで楽しい時間をすごすことができました。どうも、ありがとうございました。

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(館内は撮影禁止のため、内部や展示物の写真はありません。この3点はエントランスです)

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染織の長い歴史があり技術もセンスも素晴らしい日本、しかし意外なことですが、日本に公的なテキスタイル専門のミュージアムはありません。
絨緞Sさんは、いつもこれを「残念だ」と言っています。本当にいつかできるといいですよね。

で、その日をめざしての動きあり!?
ちょこっと「ぷらんにんぐちゅう」なんです。(*^_^*)
規模はプチ、雰囲気はカオス、いつものようにノマディック(遊牧民的)、いつものように期間限定!?
はたして何が始まるんでしょう。ふふふっ!

相変わらずの超手作りの動きではありますが、こちらで随時お知らせしていこうと思いますので、更新頻度の少ない(悲)ブログですが、気が向いたら遊びにいらしてくださいね。

今回は、コレクター魂に敬意を表して、コレクターのコレクションご紹介。08年度の「美しい世界の手仕事プロジェクト」より、です。

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(OKさんコレクションより)

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(OKさんコレクションより。ミラーワーク)

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(OKさんコレクションより。ミラーワーク)

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(YKさんコレクション。カンボジア絹絣(上))

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(YKさんコレクション。カンボジア絹絣)

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(Sさんコレクション。山岳民族刺繍)
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by kizashinoj | 2009-12-11 23:19 | 手仕事プロジェクト2010

ていねいなもの、思いがこもったもの、自由な精神があふれるもの、美しい世界の手仕事に、もっともっと出会いたい。


by kizashinoj